陶芸家のごほうびメシ

手作りってごほうびだ

手づくりのものには力があります。手づくりのものは、元気を与えてくれます。
ものづくりに向き合う有田焼の職人。彼らのまなざしと、その力の源である"ごほうびめし"を通して、
知られざる素顔の有田を感じてください。

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内弟子特製師匠好みの山菜メシ

矢鋪與左衛門窯
矢鋪與左衛門さん
1945年生まれ
日本の荒尾高校卒業後、福岡県警に就職
1991年 中村清六氏に弟子入り後、独立・開窯
2011年「現代の名エ」に認定
2012年 県政功労者知事表彰、黄綬褒章受章
有田を代表する陶芸家のひとり

自分で育てて自分でいただく。そんな生活が夢でした。

ぼくは31歳で陶芸家の道に入りました。農業には田んぼがいる、漁業には船がいる、工業にはなんもいらん(笑)。だから工業をやろうと。それから、ほうぼう訪ねて運よく先生(故・中村清六氏/ろくろの名手として知られた陶芸家)が引き受けてくれて。それで人生が変わりました。

そのころの夢は、自分で農業をして食べるものを育てながら焼き物をすることでした。私の子供のころは、おふくろがいろんな農家を手伝って食べ物をもろてきてくれました。それで、自分も米づくりがしたいなと。この場所は棚田100選で、米づくりにはぴったりの場所。裏山では畑もできます。米をつくること。大豆をつくつて味噌をつくること。山で採れる四季折々の自然のものをいただくこと。その夢が、ここで叶いました。

ミキちゃんが作る高菜の油炒め。あれは究極じゃないですか。

ミキちゃん(内弟子の白須美紀子さん)は、ここにきてもう10年になりますか。技術に関しては天オですね。ほんとにすごか。僕が教えることはもうないんですよ。ごはんは毎日いっしょに食べます。いつも、そのときに採れるものを畑にいってとってきて食べる、という感じです。ミキちゃんのごはんはうまかとですよ。僕がどういうのが好きかわかっとるでしょ。

ミキちゃんの料理で一番?それは…やっぱり高菜の油炒めじゃないですか。朝、昼、晩、食べてます。あれだけでもう生きていけます(笑)知り合いの農家から新鮮な高菜を漬けたものをもらってきて、それをミキちゃんが油で炒めて。極めつけはやっぱりとうがらし。ピリリっとしっかり効いとる。究極じゃないですか。

手づくりの魅力は……わかりやすく言えば、おにぎりにしても、お母さんが子どもにつくるおにぎりは、気が、愛が入っていますよね。それがすべてじゃないでしょうか。ミキちゃんの料理にも、優しさがこもっとるですね。カッコイイ言葉で言えば「愛をこもっとる」とか。どがんじゃろ(笑)でも、そうせんと、いいものは作れんもんね。

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岩永家直伝近所で摘んだハギナごはん

親和伯父山
岩永和久さん
1981年 佐賀県有田町生まれ
大学卒業後、実家の窯元・親和伯父山入社
有田窯業大学校で焼き物づくりを学ぶ
有田でも数少ない『石膏型職人』として活躍中

型作りを始めて10年。今でも"難しい"と思う日々です。

実家がここの窯元なので、小さなころから焼き物は身近にありました。なので、特に構えることなく、自然と焼き物の道に入っていましたね。僕がやっているのは「型作り」という仕事です。有田焼の産業は「型」を使って焼き物をつくることが多いのですが、実はこれができる人はとても少ないです。技術を習得するのに最低5〜6年はかかるので、育成が大変なんですね。

このあたりの焼き物産業は「有田焼だ、波佐見焼だ」と、昔から産地の区分が重視されがちです。正直、今でもそういう雰囲気があると思います。でも本当は、隣り合う産地だからこそ、ボーダ一を取り払いたいんですよね。有田と波佐見、お互い特色はちょっと違いますから、それぞれのいいところを共有して技術を高めあうことが、結果的に産地を残すことにつながるのかなと思いますね。

特別だけど、特別じゃないハギナごはん。

「ハギナごはん」って聞いたことないでしょ?この辺りの土手に生えてる「ハギナ」って野草を混ぜ合わせたごはんのことです。ハギナの正式名称は……ちょっとわからないですね。たぶん方言ですね。超ローカルなごはんなんじゃないかな(笑)昔から春になると母が作ってくれていて、小さいことからよくおかわりして食べていました。道端で摘んだハギナをかるく切って、さっと湯がいて、少し塩をふってごはんに混ぜ込む。春になったら食べたくなるんです。香りとか、ちょっと青っぽい感じとかが優しくて疲れた時に染みますね。

息子と保育園の帰り道に摘んで帰ったりするんですが、それが息子も楽しいみたいです。自分で「採って、つくって、食べる」というのがやっぱりいいんですかね。 料理も器も、「おいしく食べてほしい」と思ってもらいたくて作っている。そのほうが、実際に「おいしい」と思ってもらえると、僕は信じています。それが一人でも多くの人に伝わればいいなと思います。